執筆者
医療法人・クリニックの M&A・事業承継廃業と戦略・予防法務
弁護士:八木啓介
弁護士八木 啓介 Keisuke Yagi
勤務する医師の高齢化、後継者の不在や医療従事者の離職などが理由で、毎年多くの病院・クリニックが廃業・閉院しています。
地域医療を維持する観点からは、何らかの形で病院・クリニックの事業を承継することが望ましいですが、やむを得ず廃業・閉院に至る病院・クリニックは少なくありません。
病院・クリニックを廃業・閉院するとなった場合、その経営主体が医療法人と個人開業医のいずれか、また債務整理が必要か否かにより選択すべき手続は異なります。
債務整理とは、金融機関からの借入金をはじめとする債務の全部又は一部を弁済することができない場合に、債務者が行う各種手続の総称です。
医療法人・クリニックのいずれについても、債務の全額を弁済することができない場合には、原則として破産手続を選択することになります。
上記のとおり、金融機関からの借入金を返済することが困難である等、債務整理を目的とした閉院の場合、破産手続を選択することになります。
医師・歯科医師の場合、破産手続を選択しても医師・歯科医師としての資格に影響がないため、いわゆる私的整理手続で長期的な弁済を行うよりも、早期に破産を選択することでメリットが得られるケースが少なくありません。医療法人・個人開業のクリニックのいずれであっても、破産手続を利用し、免責許可決定を得ることで、原則として債務を返済する必要がなくなります。
もっとも、非免責債権と呼ばれる一定の債権については破産手続によっても免除されないため、個人開業のクリニックの場合には注意が必要です。医療法人の場合には破産手続の完了により法人格が消滅するため、非免責債権であっても当該医療法人が弁済する必要はありません。
なお破産手続に要する費用は医療法人・クリニックの規模により異なりますが、裁判所に納める費用(予納金)との関係で、現預金が全く無い状況では破産手続の申立てを行うことができませんので、ご注意ください。
医療法人・クリニックの破産手続は、以下の流れで進むことが一般的です。
01破産の申立ての準備
02破産手続の申立て(裁判所に対して申立てを行います。)
03破産手続の開始決定・破産管財人の選任
04破産管財人による資産・債務の調査
05破産管財人による資産の換価、弁済、配当
06破産手続の終結・免責許可(免責が許可されないケースもあります。)
07(医療法人のみ)法人格の消滅
破産手続に要する具体的な期間としては、規模の大きくない医療法人・クリニックの場合、①の破産の申立ての準備から②の破産手続の申立てまでに1~2か月、③~⑥は6か月~1年間くらいをイメージしていただければと思います。
債務整理を目的とする場合、民事再生・個人再生という再生手続を取ることも可能であり、破産ではなく再生手続を希望される方もおられます。
もっとも上記のとおり、医師・歯科医師は破産手続を利用しても資格に影響がないことに加え、破産・再生のいずれであっても信用情報機関への登録(いわゆるブラックリスト)は避けられないことから、債務の弁済が無くなるという点において、通常は破産手続を選択した方がメリットは大きいと考えられます。
但し、個人開業でご自宅を所有されている場合、再生手続であれば住宅ローンを支払いつつご自宅を残すことが可能ですが、破産手続を利用すると破産管財人がご自宅を売却することになりますので、この点も手続を選択する上での重要なポイントです。
当事務所では医療法人・クリニックの破産手続の申立てについて、豊富な経験を有する弁護士が対応しております。
医療法人・クリニックの資金繰りや破産手続の進め方についてのご相談も承っておりますので、お問い合わせフォーム又はお電話にて当事務所までお問い合わせください。
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