地域医療サービスの発展のために事業承継・M&A・廃業に強い弁護士

Contact

Topics

  • HOME
  • Topics
  • 弁護士コラム:医療法人の破産と清算の違い

2026.01.11

弁護士コラム:医療法人の破産と清算の違い

 

厚生労働省、総務省、四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会及び日本精神科病院協会)が2025年に公表したデータによると、およそ7割から8割の病院において、収支が赤字になっているとのことです。

物価・人件費は日々高騰する一方で、病院の収益源である診療収入の改定は202661日からのため、それまでは据え置きの状態ですが、このような収支の不均衡が病院経営を大きく圧迫しているものと見られます。

加えて、特に地方都市においては病院経営者の高齢化、医療施設の老朽化が同時に進行しており、現時点では赤字でなくとも将来的な設備投資に多額の資金を要することなどが理由で後継者が見つからず、廃業を余儀なくされるクリニックの数も増えていると考えられます。

当職はこれまでに医療法人の破産・清算に関する手続を数多くサポートしておりますが、近年ではそのようなご相談が特に増えている状況です。

医療法人の破産・清算に関する手続には注意すべき点がいくつかありますので、本コラムでは、医療法人の破産手続と清算手続の違い、また医療法人の破産手続と清算手続において注意すべき点について、当職の考え方を紹介させていただきます。

 

1. 医療法人の破産手続と清算手続の概要

本題に入る前に、医療法人の破産手続と清算手続の概要を説明させていただきます。

(1) 医療法人の破産手続

医療法人の破産手続については、理事会で決議を行ったのち、管轄の地方裁判所に対して申立てを行い、裁判所が破産手続の開始決定を発令することによって開始します。

裁判所は、破産手続の開始決定を発令する際に破産管財人を選任し、以後は当該破産管財人が医療法人を管理し、医療法人の資産(法的には「破産財団」と呼ばれます。)の換価(現金化)・債権者への返済といった手続を行うことになります。

医療法人の理事等は破産管財人による業務遂行に協力する義務がありますが、新たな病院・クリニックで勤務することは可能です。

破産管財人による業務が完了すれば破産手続は終結し、医療法人の法人格は消滅します。

 

(2) 医療法人の清算手続

医療法人の清算手続は、破産手続とは大きく異なります。

最も大きな違いは、医療法人の社員総会で解散の決議を行ったのち、各都道府県に対して解散の認可申請を行い、都道府県知事の認可を受けなければならない点です(医療法第55条第6項)。

また、解散の認可申請にあたっては、各都道府県に設置されている医療審議会の意見聴取手続を経る必要があるところ、医療審議会の開催頻度は年間で2回程度ですので、解散の手続をスムーズに進める上では医療審議会の開催スケジュールを確認しておく必要があります。

上記の解散の認可申請と並行して、医療法人の財産の処分及び換価、債権者に対する返済等を行うことになります。

都道府県知事が解散につき認可を行い、医療法人の財産を換価し、全ての債権者に対する返済を完了すれば、清算手続は完了となります。なお、債権者への返済後も財産が残っている場合(いわゆる「残余財産」)、定款に持分の定めがある医療法人においては持分権者に対して残余財産を分配することが可能です。もっとも、定款に持分の定めがない医療法人については、残余財産は国・地方公共団体等に帰属することになりますので、持分権者に対する残余財産の分配は行われません。

 

2. 医療法人の破産手続と清算手続において注意すべき点

医療法人の破産手続と清算手続の概要は上記1.に記載のとおりですが、清算手続における解散の認可申請の他にも、医療法人の破産手続と清算手続については注意すべき点があります。以下、代表的な注意点について解説させていただきます。

 

(1) 手続を遂行する主体

医療法人の破産手続は、裁判所に選任された破産管財人が主導的な役割を果たすことになりますが、解散手続においては破産管財人のような第三者は選任されず、医療法人の理事・監事・従業員において手続を遂行する必要があります。

もっとも、医療法人の従業員の解雇手続、建物・土地の換価(賃貸借契約の場合は原状回復)、金融機関からの借入金がある場合には金融機関との折衝などは、専門的な知識と経験が要求される部分が大きいため、弁護士等の専門家と相談しつつ清算手続を進める必要があります。

破産手続と清算手続は必ずしも任意に選択できるものではありませんが、場合によっては破産手続を選択した方が労力が少ないケースもあります。

 

(2) 役員退職慰労金の支払の可否

医療法人の理事・監事が退任する際、役員退職慰労金が支給されることがありますが、通常、破産手続において役員退職慰労金が支給されることはありません。

破産手続の申立てについては、債権者に対して債務の全額を返済できない状況にあることが要件となります。そのため、もし破産手続の申立て前に医療法人の役員に対して退職慰労金を支払ってしまうと、破産管財人から返還するように求められる可能性が高く、注意が必要です。

一方で、清算手続においてはすべての債権者に対して返済を完了する必要がありますが、かかる債権者に対する返済の完了後も医療法人に資産が残っている場合には、その中で役員退職慰労金を支給することも選択肢となり得ます。

 

(3) 持分あり医療法人における残余財産の分配

清算手続における残余財産の分配については既に上記1.でご説明しましたが、破産手続においては持分の有無にかかわらず、基本的には持分権者に対する残余財産の分配は想定されません。

例外的に、破産手続でも全ての債権者に対する弁済を行ってもなお、手続中に仮想通貨が高騰したこと等により法人に資産が残っているというケースがあり得ますが、この場合に持分権者に対する残余財産の分配が行われるかについて、現時点では確定的な見解は無く、事案に応じた判断が必要となります。

 

3. まとめ

本コラムでは、医療法人の破産手続と清算手続の違い、また医療法人の破産手続と清算手続において注意すべき点について、当職の考え方を紹介させていただきました。

医療法人の破産手続・清算手続については、株式会社よりも件数が少ないこともあり、対応できる専門家がなかなか見つからない場合もあると思われます。

当事務所では、医療法人の破産手続・清算手続につき多くの経験を有する弁護士が、税理士とも連携し手続のサポートを行っております。

医療法人の破産手続・清算手続を検討しているが、どのように進めれば分からないといった場合には、お電話またはトップページ末尾のお問い合わせフォームからご連絡をお願いいたします。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。