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M&A弁護士コラム「医療法人M&Aにおける『表明及び保証』(表明保証)」

医療法人M&Aの最終契約において、表明及び保証(以下「表明保証」といいます。)の内容は、売主・買主のいずれにとっても重要な交渉ポイントです。

株式会社などを対象とするM&Aにおける最終契約(株式譲渡契約など)の構成と、医療法人M&Aにおける最終契約(持分譲渡契約など)の構成は類似する部分が多く、表明保証も両者に共通して規定される項目です。

もっとも表明保証の具体的な内容については、両者の間で異なる点もあります。

医療法人M&Aについては、株式会社などを対象とするM&Aと比較すると件数が少ないため、最終契約の検討をどう進めればよいのか分からない方も多いと思われます。

そこで本コラムでは、医療法人M&Aにおける表明保証について、当職の考え方を紹介させていただきます。

 

1. 表明保証の内容を考える上でのポイント

前提として、表明保証の内容を決める上で、どのような点に注意するべきなのでしょうか。

表明保証は、一般的には①最終契約の締結時と、②M&Aの実行時の2つの時点における事実関係を、相手方に対して表明し、保証するものです。そして、最終契約の締結後に表明保証違反が生じた場合、(1)M&Aの実行前であれば契約の解除又は補償の対象となり、(2)M&Aの実行後であれば補償の対象となる、という効果が生じることが通常です。

多くの場合、表明保証違反が問題となるのは売主側ですが、上記を踏まえると表明保証の対象は限定的である方が、違反が生じるリスクも低くなると考えられます。

もっとも買主の立場からは、一定の費用と時間をかけてデュー・ディリジェンス(DD)を行い、DDにより発見された問題点や、選択したMAのスキームに付随するリスクを踏まえて幅広く表明保証の内容を規定することになりますので、ある問題が顕在化した場合にどちらの当事者がリスクを負うべきかという観点なども踏まえて、表明保証の文言を調整する必要があります。

例えば出資持分譲渡のスキームを利用する医療法人M&Aの場合、売主が出資持分を保有していることは大前提ですので、売主の表明保証として「売主が対象医療法人の出資持分を保有していること」を規定しないということは難しいと思われます。

他方で、作成済みの事業計画の到達見込みなどの将来の不確実な事象については、一義的に責任を負うべき当事者が決まるものではありませんので、交渉が難航するポイントとなり得ます。

 

なお、DDで発見された問題点を踏まえて表明保証の内容を検討する必要があることからも明らかですが、「網羅的な表明保証のテンプレート」のようなものは無いと考えております。MAの実務では、表明保証については一定のフォーマットをベースに、その案件に応じたカスタマイズを行っていくことが一般的と思われます。

 

2. 医療法人M&Aの特殊性

次に、表明保証の内容を検討する上で理解する必要がある医療法人M&Aの特殊性について説明させていただきます。

多くの方がご存じかと思いますが、医療法人には「非営利性」と呼ばれる概念があり、株式会社が株主に対して行う配当、すなわち剰余金の分配を行うことができず(医療法第54条)、また営利を目的とした病院等の開設に対しては許可を与えないことができるものとされています(医療法第7条第7項)。

かかる非営利性の観点から、医療法人においては過剰な役員報酬の支払やMS法人に対する利益の移転が厳しく制限され、現預金の内部留保が過剰な状態にある医療法人は少なくありません。

なお、医療法人の清算時に残余財産がある場合でも、持分の定めのない医療法人については当該残余財産が国庫に帰属することも、非営利性の現れと言えます。

 

また非営利性以外の特殊性として、医療法人M&Aにおいては、買主側が対象法人の理事会・社員総会のコントロールを取得する必要があることが挙げられます。具体的には、M&Aの実行直後に理事の過半数と社員総会の過半数が買主側のメンバーで構成されるよう、最終契約において規定します。

 

加えて、医療法人M&Aのスキームのうち、合併、会社分割、事業譲渡については、その実行にあたり当局の認可が必要になることも医療法人M&Aの特殊性の1つです。

 

以上の点を踏まえて、下記3.に医療法人M&Aにおける表明保証の一例を記載いたします。

 

3. 医療法人M&Aにおける表明保証の一例

医療法人M&Aにおいては出資持分の譲渡がスキームとして採用されることが多いため、以下に出資持分譲渡スキームにおける売主の表明保証の項目の一例を記載いたします。

 

1 売主の表明及び保証
・売主の権利能力・行為能力
・最終契約の締結及びM&Aの実行に必要な手続等の完了
・最終契約の締結の有効性等
・法令、司法・行政機関等の判断への不抵触
・法的倒産手続の不存在
・反社会的勢力との関係の不存在
 
2 出資持分等に関する表明及び保証
・譲渡対象となる出資持分の保有の適法性、当該出資持分に対する担保権等の不存在
・社員総会の構成員について
 
3 対象医療法人に関する表明及び保証
(1)  基本的事項
(2)  対象医療法人の財務に関する事項
(3)  対象医療法人の資産に関する事項
(4)  対象医療法人の知的財産権等に関する事項
(5)  対象医療法人の契約に関する事項
(6)  対象医療法人の許認可・法令遵守等に関する事項
(7)  対象医療法人の役員・従業員に関する事項
(8)  対象医療法人の税務に関する事項
(9)  対象医療法人の保険に関する事項
(10) 対象医療法人の環境に関する事項
 
4 情報開示に関する事項

 

4. まとめ

本コラムでは、医療法人M&Aにおける表明保証について、当職の考え方を紹介させていただきました。

現在、医療法人M&Aを検討中の皆様の中には、周りに十分な経験を有する専門家を見つけることができず、M&Aの進め方などでお悩みの方もおられるかと思われます。

当事務所では、医療法人M&Aを多数サポートした経験を有する複数の弁護士が、公認会計士・税理士とも連携し、医療法人M&Aのプロセス全体をサポートしております。

当事務所では医療法人M&Aに関し、売主・買主のいずれをもサポートしておりますので、医療法人M&Aに関してお悩みの方は、お電話またはトップページ末尾のお問い合わせフォームからご連絡をお願いいたします。

 

※本コラムの内容は、一般的な情報提供であり、具体的なアドバイスではありません。お問い合わせ等ございましたら、当事務所までご遠慮なくご連絡下さいますよう、お願いいたします。